DPAT,DDAC,TCSS、Crystallized ヘッドフォンアンプシリーズに代表されるハイエンドオーディオ機器はもちろん、オリジナルポータブルオーディオ機器,日本製造を大切に長く使える最高性能を更に長くお使い頂けるサービスを提供し続けています。オーディオだけでなくコンピューター,アナログ技術を駆使して高度なオリジナル商品,カスタム商品,カー用品をお届けする それが OJI Specialです。

headphone amplifiers 
Philosophy and technology



我々がヘッドフォンアンプに求めているのは ヘッドフォンを良い音に変えるアンプではありません。
何故様々なヘッドフォンが存在するのでしょうか?
望む良い音は人それぞれ異なることに注目しなければなりません。
芸術的な感性や好みなどを含む「オーディオ再生」は特性では語ることが出来ない要素も含みますが、やはり特性は大切です。
歪み、ダイナミックレンジ、周波数特性などの値が十分なのかそうで無いのか は勿論ですが、なぜそのスペックが必要なのかを考えたり、理想を求めて不可能とも言えるスペックに挑戦していくことも大切なことだと考えています。
 
ヘッドフォンアンプは スピーカーを鳴らすためのものでは無いことは言うまでもありません。我々は 様々なヘッドフォンの特性を把握して特定のリファレンスヘッドフォンに頼ることなく「全てのヘッドフォンを最適にドライブ」することに注視して設計しています。

我々が求めるヘッドフォンアンプの姿やスペックの一部をここに簡潔にまとめておきますが、目指すはヘッドフォンの性能を最大限に引き出すことに他なりません。


■必要なパワーと諸特性

ハイパワーアンプであれば、どのようなヘッドフォンを持ってきてもしっかり再生できるのでしょうか?
パワーはどのくらい必要なのでしょうか?

実際のヘッドフォンの場合、105dB/1mW と 85dBのものでは ほぼ同一のインピーダンスの場合 20dBもの感度差があることになります。20dBと言うと 電力比で100倍に相当します。
つまり 115dBを求めるのであれば 105dBのものでは スペック感度の10倍の出力で 10mW、85dBのものでは 1,000倍の1000mW つまり 1Wが必要な事になります。ただし実際にはスペック感度とは異なる「人の感覚での同一音量」は異なる場合も有りますので様々なヘッドフォンで実際に聴いて確認してみないと正確なことは解りません。ここではおおよそのイメージの話となります。

 さて例にあげたヘッドフォンでは 60~100オーム付近で 20dBもの差があるヘッドフォンを如何にして鳴らすかは非常に難しい課題になります。
さらに ヘッドフォンのインピーダンスはスピーカーと大きく異なり 8Ω~600Ωと大きな幅があります。これらは ボリュームコントロールやゲイン設定だけでは対応出来ません。音量だけで無く音質まで含めますと設計で決まるアンプの素の諸特性は大きく変えられないからです。

一例として理想的なスピーカー再生アンプの出力として 8Ωで12Wに設計されたアンプを例にします。これは 4Ωで24W 2Ωで48W。逆に 16Ωでは6W、スピーカーではほぼないインピーダンスの32Ωでは3W、64Ωでは1.5W と大きく変化します。ところが このようなアンプをヘッドフォンアンプとして作るには現実的にはものすごく難しいアンプの設計になります。
ヘッドフォンアンプで広範囲に対応することの難しさの理由は インピーダンスによって 最大電流、最大電圧が大きく変わり インピーダンスが低い方は スピーカーを鳴らすハイパワーアンプ並みの素子や回路が必要ですし、ハイインピーダンスではその大きな素子は無駄になり、逆に高電圧が必要になります。素子含めた全ての回路は 適正な出力範囲が決まっているため このような広範囲全てに対応することが難しいからです。 
パワーだけを見ているわけでは無く、負荷にあわせた諸特性を同時に設計されなければならないからです。
我々がおこなった手法は もっとも過酷な条件下となる 鳴らしにくいヘッドフォンと非常に感度が高いヘッドフォンが共存する領域で それぞれ十分にドライブする特性でありながら、全体をまとめ上げる手法です。
具体的には低いインピーダンスでは不要で使うことが無いパワーは求めず特性を重視、ハイインピーダンスでは、諸特性を重視しながらしっかりと鳴るパワーの確保等です。

言い換えると使わない領域となってしまうハイパワーは ヘッドフォン再生には向きません。逆にヘッドフォン再生に必要なミリワットと言った微細領域の特性を重視しなければなりません。さらにヘッドフォンはノイズの影響は多大で、再生部分は耳に近い為 S/N比の悪いアンプは問題が有ることは言うまでもありません。パワーとも密接な関係があります。S/N比はシグナルとノイズの比ですから 本来は使用出力領域 つまり どちらかというと普段聞くことが多い微細な出力でノイズが少ない方がヘッドフォンでは有利です。

Direct Double Driveでは低能率ヘッドフォンが存在する64オームでの バランス出力は約3Wと十分な出力ながら、32Ω1.5W時での代表特性は
S/N比-118dB 歪み率0.001%以下(1KHz) (BDI-DC44D TWIN DDDバランス出力)と、感度が高いものと低いものに対応する適切で十分な出力、かつ高いクオリティーを保持したまま広範囲のヘッドフォンに対応する特性となっております。

ヘッドフォン感度特性と必要なパワー

■ダンピングファクタ

ダンピングファクタは様々な解釈がある様ですが、比較的低インピーダンスタイプ かつ周波数が変わると大きくインピーダンスが変わるヘッドフォンで問題となります。
大切なことは、 ヘッドフォンメーカーの提示する
「インピーダンス特性通りに理想的にドライブするとそのヘッドフォンが持って生まれた周波数特性になる」

そして 「実際に変わる変化を判断するのはリスナー」という前提があります。

ダンピングファクタが低い場合は 理論的にヘッドフォンの持つ特性通りには再生できません。細かな理由は割愛しますが、これは 「ダンピング」という名称で勘違いをすることが多いスペックです。ダンピングファクタはアンプの出力抵抗と負荷抵抗の比率です。言い換えると 「負荷変動に対して本来からのレベル差がどのくらい生じるか」の指標になります。

ヘッドフォンの公称インピーダンスは、およそ8オームから600オームほども大きな差がありますが、ダンピングファクタに対して注視しなければならないのは この公称インピーダンスではありません。公称インピーダンスとは別の問題が有ります。

それは 周波数によるインピーダンスの変化です。
インピーダンス特性が比較的フラットな平面駆動型から2倍以上もの大きな変化を伴うものなど、多い少ないはありますが、ヘッドフォンやイヤフォンはインピーダンスの周波数変化が有る物が多いです。このような特性の違う様々なヘッドフォンの駆動を考えた場合、理想はアンプの出力抵抗の存在はあってはなりません。本来は音質変化となるものは無い事が理想だからです。
つまり 目指すは出力抵抗はゼロ。負荷変動の問題が無い状態です。
言い換えるとダンピングファクタは大きければ大きいほど、特性が異なる全てのヘッドフォンに対応できる事になります。
人の聴覚は特性では表せないような微細な変化も聞き分けられますし、耳に近いヘッドフォンは大きな音質の変化となってリスナーに伝わってしまうからです。
仮に3dBの変化がある つまり「パワーが二倍の音量差が有ると問題だ」 ということは容易に想像して理解できるはずです。ダングファクタ10で16Ωのヘッドフォンのインピーダンス特性が8~32Ωにに変化したとすると容易にそれに近いレベル差が生まれます。
人がどの位の差を感知できるかは人それぞれですが、少なくとも0.1dBに満たなければその影響は音色の変化程度しか感じないのでは? と想像できます。
この変化が有った場合それに気がつくか 音色の違いとして感じるのかなどはリスナーの感覚次第です。こういった感受性は我々が決める事ではありません。

 当社がバランスヘッドフォンアンプを世に送り出し 既に20年ほどの年月が流れましたが、その間、様々なハイエンドヘッドフォンの変革があり その都度、開発と理論的な証明を行い続けてまいりました。
ヘッドフォンのプラグ接点は勿論ですが、ケーブルはスピーカー再生に比べ非常に抵抗分が大きく、大きく音が変わります。
それらの影響も考え出力抵抗(アンプの内部抵抗)を下げようと 出力トランジスタを ただ単に並列駆動したのでは不要なパワーとなる最大電流が増えるだけで同一出力では内部抵抗はトータル的に下がるわけではありません。さらに配線が長くなったりする場合も有り他の特性も変化し、特性が悪化することも多いです。

ハイエンドバランスヘッドフォンアンプとして 内部、外部配線など それらの影響までも踏まえた場合、必要なアンプ単体での出力端子での性能はダンピングファクタ(DF)約800~1000以上(16Ω)としています。その場合公称16Ωのインピーダンスが 8~32Ωに変化してもそのレベル差は 約0.03dB程度以下となり ヘッドフォンの特性を極限まで引き出すこととなります。

これらは ヘッドフォンワイヤーの変化にも敏感になります。ヘッドフォンワイヤーの特性の差は アンプが理想に近くなればなるほど その差がハッキリと分かるのです。

Direct Double Driveでは基本特性を犠牲にすることなく 出力抵抗は約0.01Ω以下 (代表特性BDI-DC44D TWINDDD 32Ω DF3200 /16Ω DF1600)広帯域に渡って同一の低い値という十分な特性を確保しています。理想的なアンプに向かい特性向上をもたらすテクノロジーとなっています。

保護回路とダンピングファクタ

■周波数特性

人が聞こえる周波数は一般的な認識では20~20KHzとされていますが、現在の研究では 人は更に広帯域を感じ取る能力があるともされています。その帯域の信号を正確に再生するためには、さらに広大な領域の周波数まで純粋に増幅することが必要です。192KHzなどハイレゾリューション音源となると更に広大な帯域が必要です。

音楽は人間が楽しむものです。定説にとらわれることなく理想、つまり出来れば制限が無い方が望ましい との考えから100KHz以上の周波数まで大切に増幅することに情熱を注いできました。

回路設計を考えた場合、周波数によってレベルが減衰していくポイントは十分なゲインが無く、多くのアンプにとって欠かせないNFBなどが応答していかない、つまりアンプとして正確な機能を果たしていない領域とも言えるからです。言い換えると 歪みとなる領域はできるだけ人が感じやすい周波数から遠ざけた方が望ましいわけです。
増幅装置として回路を考える場合には 必ずNFB(Negative Feed Back)は欠かせません。電流帰還などの部分帰還含めNFBは大切な技術ですが、しっかりとした設計及び実装技術が無いとNFBは理論どおりに動作しないのです。
特に 100KHz以上の領域では、非常に難しい技術となってきますが オーディオ帯域を理想に近づけるためには 少なくとも可聴帯域の10倍以上となる遙か彼方まで考えなければなりません。
1cmの長さを正確に測る場合には 少なくとも1mm単位のメモリがついている物差しが無いとよく分からないと言えば わかりやすいでしょうか。

当社Tuned2 Tuned3 そしてDirect Double Driveのドライブ回路ではオーディオ信号帯域の遙か彼方とも思える1MHzまでの特性を大切にし、音として聞こえる可聴帯域を超えた100KHzの矩形波の応答波形やNFBなどの特性も考慮するなど周波数応答や位相特性がよいアンプとなっています。

■ ヘッドフォンアンプ と 変革

我々が バランスヘッドフォンアンプを世に送り出してから 既に20年あまりの歳月が流れました。その間 毎年と言って良いほど様々なヘッドフォンが登場し 当社ヘッドフォンアンプもさらに上を目指し改良してまいりました。
開発してしばらくたった2008年当時のヘッドフォン祭りでは バランス再生はもちろんですが、当社デジタルデータトランスポートDPAT(でぃーぱっと)にて デジタル音源を再生するという手法も珍しい時代で 当時はCDプレイヤーとシングルエンドヘッドフォン再生と記憶しています。昨今では多くのメーカー様がネットワークオーディオなどと名称は変わってはいますが、基本的にはデータを再生するという同様の手法で展示する時代となっていて時代の急速な変化を感じております。
春のヘッドフォンショー2008/04/19 左上 DDAC Pro 左下 DPAT Pro 右下 バランスヘッドフォンアンプ 右上 DPATデータプレイヤーコントロール画面
オーディオ製品は長く使うものです。我々の試聴機の中にもレコード全盛期のプレイヤーなど50年以上使っている機材も多いです。
耐久性があり壊れないことはもちろんですが、基本性能の高さが大切だと考えております。
ヘッドフォンは 他のオーディオ以上に変革が激しいカテゴリだと感じています。短期間の製品変化の中でお客様の立場を考えた場合 テクノロジーや製品の変化に対応すべく 基本性能を第一に考え さらに 改良を加えていく姿が望ましいと考えております。
当社がオプション設定を多く提案し その多くを販売後もアップグレード対応しているのは テクノロジーや製品の変化に対応していくためです。
日々変化する ヘッドフォンや周辺オーディオ機器に柔軟に対応し、最新の性能に生まれ変わるアップグレードも数多く揃えております。

我々の願いは 当社製品をお選び頂いたユーザー様に末永くオーディオを楽しんで頂きたい という想いで製品とオプションの開発を日々続けています。